友人からの「先行契約」についての相談

私は趣味でサックスを吹いているのですが、その仲間のAさんから、お部屋探しで相談がありました。普通、お部屋を探す場合に、まず部屋の見学(内覧)をするのですが、彼が探している地域では、募集している物件がほとんど居住中であり、内覧ができず、お客様は内覧をせずに契約するのだそうです。いわゆる「先行契約」というのですが、私が取り扱う都内でも郊外よりの地域では、あまり事例がなく、都心や人気が高いエリアでは多い慣習のようです。部屋を確認せずに契約するというのは、普通に考えてリスクがあることなので、あまりお勧めできないと答えました。ただ、そうは言っても住みたいと思う部屋はほとんどが先行契約なので、手をこまねいているうちに、どんどん先に契約されてしまいます。悩ましい状況であり、相談です。お部屋探しのポータルサイトなどを調べると「先行契約」について、否定しているわけではなく、注意を促す記述をしながらも、お客様としても気に入った物件を早く成約できるメリットがあると書いてありました。できれば同じような別の物件を見学したり、画像など詳細な情報を得てから検討するように、とも記載していたので、AさんにはそのサイトのURLを貼って送りました。彼はそれから、たまたま内覧ができる物件を一つ見つけてきたので、まずそれを内覧してから、今後どうするか考えるそうです。

そんな相談を受けた矢先、「先行契約したけど思っていたのと違うのでクーリングオフできないか」という別のBさんからの相談がありました。Bさんはネットで見つけた物件を問い合わせると、居住中で内覧できないので、他の部屋を見せられて契約し、住んでみたら、ロフトが思ったより小さかったことや、いくつか食い違いがあったので、クーリングオフしたいとのこと。ただ、賃貸の場合は、クーリングオフの制度は適用されないんですね。これは、賃貸契約の場合は、重要事項説明書などを配布して詳細な説明をするからだと思います。解約するとなると、戻るのは家賃くらいで、かなりの契約金が無駄になってしまいます。ただBさんも、契約した部屋の内覧はせずに契約をすることに対して、リスクは認識してはずだという疑問がありますが、不動産業者が、先行契約についてのリスクや説明をせずに、契約に誘導したのかもしれないし、他の部屋を内覧したことで、ここと同じだろうという間違った認識をしてしまった可能性があります。

 先行契約は、物件のオーナーや業者が、手っ取り早く時間と手間をかけずに契約させたい、という思惑を、人気があるエリアだというお客様の弱い立場に乗じて押し付けているのだと思いますし、いくら説明していたとしてもBさんのようにトラブルになる場合も多いので、好ましくない慣習だと思います。ただ、一方で契約自由の原則もありますし、これは一業者で解決できることでなく、不動産業界全体で考えなければならない問題だと思いますので、宅建業界でも是非取り上げて、改善して頂きたいと切に思います。

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